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「悪」の進化論?「邪悪の蕾」は密やかにふくらむ

[著]バーバラ・オークレイ [出版]イースト・プレス

 ヒトラー、毛沢東などの「悪」を法律や道徳ではなく、遺伝学・脳科学で徹底検証します。本書は悪の遺伝子?ヒトはいつ天使から悪魔に変わるのかの続編です。

 

| 死体を数える大統領、ミロシェビッチ

 前作悪の遺伝子?ヒトはいつ天使から悪魔に変わるのかでは境界性パーソナリティ障害の毛沢東を取り上げていました。

 今回は「バルカンの虐殺者」ミロシェビッチ元セルビア共和国大統領に焦点を当てています。

 ミロシェビッチが権力を失うまで22万5000人位上が殺され、数百万人が難民となりました。

 ミロシェビッチは毛沢東と同様にウソを言うのが特徴です。西側諸国ヘは「共産主義が一番」であると、東側諸国では「資本主義が最も良い」と、正反対のことを述べていました。


| なぜ、独裁者に魅せられるのか?

 ミロシェビッチや毛沢東、ヒトラーになぜ人は従ったのか?従った理由の1つは記憶力が優れていたからです。

 会話するとき、ヒトラーは本の一節に書かれていることを何も見ずに読み上げ、周囲を驚かせます。ヒトラーは記憶力によって自らの能力を格段に強調することができたのです。


| なぜ、独裁体制を維持できるのか?

 ヒトラーなどの有名な独裁者は周囲から反抗されることなく、政権を運営しています。なぜか?「反抗」を許さないからです。反抗したものはすぐに殺します。

 独裁者の周囲にはイエスマンが集まり、さらなる独裁へと進みます。


| 独裁は極端な行動で崩壊する

 しかし、独裁者は周りの意見を聞きません。極端な行動を取り、失敗を招きます。

 戦争の時もそうで、かつて日本もアメリカに負けるがわかっていましたが、昭和天皇は戦争を続け敗北します。もしアメリカとの戦争を諦めていたら、犠牲者はもっと少なかったでしょう。


| 成功者は悪人が多い

 著者いわく、ビジネスで成功する人も独裁者、つまり悪人が多いようです。「権力」を追い「ウソ」をつき「反抗」を許さない。悪人の特性を身につけた者は成功していくようです。

 ただ、悪人は独裁体制を行うため、極端な行動を取り大きな失敗を行い、倒産する会社もあるようです。


| 目次

1章 「壊れた脳」はゆがんだ夢を見る(「悪の帝国」のトロール船での航海;話す言語によって「世界」は違って見える? ほか)
2章 虐殺死体を数える大統領(コソボから来た「黒い瞳の息子たち」;「権力」に狂い焦がれた虐殺者 ほか)
3章 「悪の遺伝子」はしたたかに繁殖する(“悪の起源”に情熱的に目を凝らした女;徹底した「戦略的思いやり」行動? ほか)
4章 「邪悪の蕾」は善人の中でもふくらむ(マザー・テレサも独裁者に媚びた?;「私のような人間は、五百年に一人だ」 ほか)
5章 「狂った遺伝子」が眠りにつくとき(それでも父は姉を愛した;二〇〇七年一月、ついに「ナゾの核心」へ ほか)

 



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