[著]
オリ ブラフマン, ロム ブラフマン
オリ ブラフマン,ロム ブラフマン 日本放送出版協会 2008-12
原書は、アメリカで発売直後にニューヨークタイムズ紙のベストセラー入りして話題になった一冊。私達が普段どのようにして「スウェイ(支配・影響)」に操られているのか、7つの法則に分け解説します。
私達はあらゆるスウェイ(支配・影響)を受けて生きていることを実感しました。その例として、私は自転車で走行中に道を間違えた時、なぜか時間を取り戻そうと考えてしまします。
ギャンブルが好きな方も同様です。賭け事で損したなら、今度はその損失分を取り返そうとします。
それらはスウェイ(ここではコミットメントの法則)によるものだと著者は述べます。ある物事に時間や労力やお金をかけたあとでは、それがうまくいかないとわかっても、後戻りできないからです。
では、8つの章の内、興味深かった3つのスウェイ(支配・影響)を紹介します。
| 損失の可能性をなんとしても避けようとする
まず1番目のスウェイの法則です。
宝くじで10万円手に入れるのと、財布をなくして10万円損するのはどちらの方が衝撃的か。
一般的には何かを得るよりも失うほうが大きいものです。
私も損をしたくないからムダだとわかっても特約付きの保険に入ろうとしてしまいます。著者曰く、これは損失回避の法則のようです。
損失回避の法則:損失の可能性をなんとしても避けようとする
結局私たちは損失回避の法則で普段損しています。
| うまくいかないとわかっても、止めることができない
続いて2番目のスウェイの法則。
私は履歴書があともう少しで完成間近という時、字を間違えました。履歴書は修正液を使ってはならず、一文字でも間違えると別の紙に一から書き直しとなってしまう。本来、別の紙に書きなおせば良いのだが、字をごまかして履歴書を完成させようとしてしまう。
なぜなら、今までの時間がもったいないから。
なぜ、時間を取り戻そうとするのか。これはコミットメントの法則によるものです。
コミットメントの法則:ある物事に時間や労力やお金をかけたあとでは、それがうまくいかないとわかっても、止めることができない
コミットメントの罠、攻略するのは難しい。解決策はのちほど紹介します。
| 大多数の意見に従う
最後に3番目のスウェイの法則
私が以前見た動画「マインドコントロールの落とし穴③」で新興宗教団体が使っている手口が紹介されていました。内容は周りの意見に従ってしまい自分の判断を変えてしまうというモノ。
この集団の意見に従ってしまう行為を著者はグループ力学の法則であると述べます。いくら自分が正しいと思えても、人は他人の意見に左右されます。まさに集団の圧力、恐ろしい。
グループ力学の法則:四人に三人は、まちがいだとわかっていながらも大多数の意見に従う
このスウェイ(今までの法則)を打ち破る方法を著者は紹介しています。
| 損失回避の法則を改善するには
1番目に紹介した損したお金を取り戻そうとする「損失回避の法則」は
長期的視点を持つことで改善できると著者は力説します。
短期的目標に重点を置き過ぎると、私たちの思考はゆがめられることもある。一方で、長期的視点から見れば、現在の損失可能性はそれほどの脅威には思えなくなるのです。
仏教の解説本や精神医学の本でも長期的な視野について乗っていたことを思い出しました。納得。
| コミットメントの法則を打ち破るには
2番目に紹介した時間を取り戻そうとしてしまうコミットメントの法則に対して解決策は、
- “やってしまったことを受け入れる“
- “自分のはまっている穴を掘りつづけることはやめて、方向転換をする”
口では簡単に言えるが、行動が難しい言葉。私もすぐに過去を捨て去るような人間になりたい。
| 自分のほうが正しいのに
3番目に紹介した、他人の意見に惑わされてしまう「グループ力学の法則」の解決策ですが、 「反対者の存在がいるおかげで議論が正当な方向へ向いている」ことを信じ続け、自分の主張に自信を持ち続けるというモノ。
解決策でないように思われまするが、唯一の防衛策。 仏教では自分を信じ続けることが良いこととされています。私も自分を信じることが解決策であると思いました。
| 目次
プロローグ
テル・アヴィヴ版『大草原の小さな家』/心臓切開手術とアスベスト/無視されたオー・リング/誤診/心理学とビジネスの重なるところ スウェイの法則1
損失の可能性をなんとしても避けようとする=損失回避の法則
第1章 事故を分析する
テネリフェ島で足止め/飛び立つなら今しかない/航空史上、最悪の大参事/神経過敏な買い物客/固定料金の魅力/保険にお入りになりますか?/さようなら、マーサズ・ヴィンヤード島
スウェイの法則2 ある物事に時間や労力やお金をかけたあとでは、それがうまくいかないとわかっても、止めることができない=コミットメントの法則
第2章 コミットメントの泥沼
負けないための戦い/生きて出ていけるのはゲーターだけ/二〇ドル札を二〇四ドルで買う/偉大なる社会/ベイザーマンの競りが始まる/政治的墓穴を掘りつづける
スウェイの法則3 客観的なデータではなく、最初の印象にもとづいて人やものの価値を判断する=価値基準の法則
第3章 ホビットと失われた環
実在するインディ・ジョーンズ/失われた環を探して/人類史上の大発見/地下鉄で聴くストラディヴァリウス/半値のホットドッグ/ホーマー・シンプソンとピルトダウン人/IQを低下させる安い飲み物/まちがっていたシェイクスピア/古生物学の面通し/小さすぎる脳
スウェイの法則4 ひとたびある物事に評価をくだすと、それに反する証拠が見えなくなる=評価バイアスの法則その1
第4章 マイケル・ジョーダンと初デート型採用面接
NBA史上最悪のドラフト指名/ドラフト指名順位の呪い/温かい講師・冷たい講師/ヘーゲルを読むデート相手/採用担当者の魔法の箱/恋をする大学一年生と採用担当者の共通点/採用面接で聞くべき質問/美人と低利率は同じ効果/〈ミラー・イメージ効果〉/「事実だけを述べてくれ」
スウェイの法則5 評価ラベルをつけられた人は、実際にラベルどおりの特徴を身につける=評価バイアスの法則その2
第5章 躁うつ病の流行とカメレオン効果
精神医学界の大流行/雪ダルマ効果/診断モデルと治療効果/偽薬とブロザックの効果は同じ/イスラエル軍教官をひっかける/自分に貼られたラベルに自分を合わせる/電話のあなたは美しい/自分を年寄りだと思っていると/愛をはぐくむ橋
スウェイの法則6 結果の損得よりも手続き上の公平性を重視する=プロセスの公平性の法則
第6章 フランスでは太陽が地球のまわりを回る
百万長者の足を引っ張る人々/最終提案ゲーム/公平性への執着/情にもろい自動車ディーラー/犯罪者もベンチャーキャピタリストも話がしたい/ロシア流の公平性/合理的なマチゲンガ族
スウェイの法則7 報酬の可能性をちらつかされると、かえってモチベーションが下がる=金銭的インセンティヴの法則
第7章 報酬とコカイン
スイスの核廃棄物問題/金銭的補償を提示すると/GMAT試験での反発/快楽中枢の力/後退する博愛中枢/神経学的誘拐事件/コミーハイの失敗/期待がもたらす要素
スウェイの法則8 四人に三人は、まちがいだとわかっていながらも大多数の意見に従う=グループ力学の法則
第8章 異議を唱える正義
最高裁判所の会議/呪文を打ち破る/コーラの瓶の底のようなメガネ/フェリス・ビューラーと反対者/ポテトの名前にうつつを抜かしているときではない/あらゆる反対に答える/機長は神にあらず/声に出して言う/正義はなされる
エピローグ スウェイを打ち破る
離岸流に襲われたら/長期的視点の有効性/禅の経済/ある人にとってはゴミでも、ほかの人には傑作/命題的思考/配線工・銀行員・製薬会社のMRに共通するもの/真の悪魔の代弁者
謝辞
訳者あとがき
原注
| 関連書籍
マッテオ モッテルリーニ 紀伊國屋書店 2008-04-17
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