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トップページ » 書評 »  水の未来 世界の川が干上がるとき あるいは人類最大の環境問題

水の未来

[著]フレッド・ピアス [出版]日経BP社

 世界で11億以上の人々が安心して飲める清潔な水を手に入らない。今後、世界で水不足がおき、40億人が水不足になるとされています。

 著者は過去に起きた水をめぐる戦争や「なぜ、水不足が起きるのか」に焦点を当て、リポートします。

 

| 第3次世界対戦、水戦争

 ノーベル平和賞受賞者コフィー・アナン前国連事務総長もこう述べました。 「今、資源をめぐって戦争が起きているが、石油は風力は太陽光発電の自然エネルギーに替り、希少金属はリサイクルされていくであろう。」
 
 直後にこう述べました。「しかし、次は水の戦いとなる。」と。
 第1次世界対戦は土地をめぐって、第2次世界対戦は労働力をめぐって、冷戦以降の戦争は天然資源をめぐって争っています。

 そして次に起こるとされるのが水をめぐる争い。つまり、水戦争です。

 

| 水不足の原因は農業

 先進国が水を無駄遣いする一方で、発展途上国は水不足で死者が増大しています。その大きな原因が農業。
食物1kgの生産に必要な水の量は牛肉が15000Lです。
 食物1kgの生産に必要な水の量は牛肉が突出しています。農作物と違い、牛肉の場合、きれいな水が必要です。先進国の人々が牛肉や豚肉を食べる量が増えれば、必要な水の量も増え、水不足はさらに深刻になります。


| 節水では水不足は解消しない

 よく夏にCMなどで「節水しよう!」という宣伝が流れています。著者によれば、家庭で節水しても、わずかな量であり意味が無いようです。

 

| 水問題に関する本の注意点

 この本「水の未来」の監修者、沖 大幹氏も述べていますが、水問題に関する本はウソが多いです。水問題は国際問題まで発展するので、本来、国際情勢から世界の農業問題まで調査する必要があります。

 しかし、調査できずに、「水不足は節水が鍵になる」というような理論を主張している本がたくさんあります。

 このような本にダマサれないようにご注意下さい。

 

| 目次


水の単位について

1 人間というスポンジ
2 イングランド?丘陵地帯の水が涸れた理由

パート1 世界の川が干上がるとき……農業が死ぬ
3 水の循環を追いかける
4 パキスタン・インダス川?不幸の谷
5 アメリカ/メキシコ?リオグランデ川をわたる

パート2 世界の川が干上がるとき……子孫たちの水が奪われる
6 インド・地下水?巨大な無秩序
7 カダフィ大佐がつくった人工河川?リビア
8 世界最大の水汚染?インド/バングラデシュ
9 砂上の楼閣?世界の帯水層が涸れるとき

パート3 世界の川が干上がるとき……湿地帯が滅びる
10 共有の富?湿地帯が危ない
11 チャド湖?氾濫原の悲劇
12 破壊されたオアシス
13 メコン川?河川の鼓動を感じる

パート4 世界の川が干上がるとき……洪水が人々を襲う
14 中国?黄河が抱える深刻な問題
15 地球温暖化がもたらす川の危機

パート5 世界の川が干上がるとき……その裏でダムが建造される
16 ダムは世界を救わない
17 ダム貯水池がもたらす環境問題
18 ダムが洪水を起こすとき
19 峡谷を救え?フランス・ロワール川と中国・三峡ダム

パート6 世界の川が干上がるとき……人間は水をめぐって争う
20 イスラエルvsパレスチナ・・平和の井戸に毒を入れる
21 現代初の水戦争・・ヨルダン川と六日間戦争
22 巨大ダムという名のダモクレスの剣

パート7 世界の川が干上がるとき……文明が滅びる
23 エリシャの春とアンコールワットの謎?メソポタミアとクメールはなぜ滅びたのか
24 西部を失う?現代アメリカ コロラド川が干上がるとき
25 アラル海?世界の終焉の地
26 ニヤゾフの悪夢のごとき計画?トルクメニスタン
27 オーストラリア・マレー川?リバーレッドガムの林を復活させる

パート8 世界の川が干上がるとき……新しい水源を探す
28 人々に水を届ける方法はあるか?
29 汚水を活用する方法はあるか?
30 閉ざされた流域、閉ざされた発想?カリフォルニア・ソルトン湖
31 大気中から水をつかまえろ

パート9 世界の川が干上がるとき……雨を集めろ
32 雨水を集めろ?中国・甘粛省/インド
33 雨水収集システムを世界へ
34 涸れない古代の泉「カナート」

パート10 世界の川が干上がるとき……自然の流れを取り戻せ
35 洪水を手なずける方法?自然に戻す
36 サダムの妄想からチグリス・ユーフラテス川を解放する
37 水1滴あたりの作物の収量を増やすには
最後に・・水の未来と水の倫理

謝辞 解説 水をめぐる環境問題  沖 大幹

 


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