[著]
ニコラス・G・カー
本などスラスラ読めていたのに・・、最近は。
パソコンで作業する日々が多くなったこの頃、本を読むスピードが遅くなったり、集中して読めなくなった人も多いのでは?
なぜ、本が読めなくなっていくのか。著者ニコラス・G・カーは現代のネット社会が影響していると考えます。メディア論から神経科学までを使ってネットと脳の関係を解きます。
| 押し寄せる大量の情報
電気がなかった頃、人々は時間に左右されず、集中して物事に取り組むことができました。 時代は代わり、現代のように電子メディア(テレビ・インターネット)が普及します。電子メディアの依存度もますます増大。
2006年にジュピター・リサーチ社によって行われた研究によれば、テレビ視聴者層とネット・サーフィンする層の「重なり度合いは極めて大きな」もので、最も熱心なテレビの視聴者(週35時間あるいはそれ以上テレビ番組を観る)は最もヘビーなネット・ユーザー(週30時間あるいはそれ以上をオンラインで過ごす)でもあるのだという。(P.126引用)
情報が洪水のように流れ出し、
人間の脳の処理速度を超えることに。結果、脳は注意散漫となります。しかも、
脳内回路が変化し、ネットに適した「ネット脳」へと変化。
「知的スキルの活用をやめた場合、それらは単に忘れられるのではない。そうしたスキルのために使われていた脳の部位が、代わりに実践しているスキルによって乗っ取られてしまう」(P.56引用)
「代わりに実践しているスキル」とはネットに適した脳のことです。大量のメディアによって脳内では集中力のある細胞は減り、「電子メディア専用」の脳が再構築されます。
| 電子書籍が到来すれば本も変化
今まで紙の本を読んでいて出来なかったことと言えば、わからない用語やもっと知りたいことをその場で「検索」することです。もうこの問題は解決しました。電子書籍端末にはネット回線がついており、いつでも「検索」出来ます。
当然、人々の読書スタイルも変化していきます。
著者は予想します。「オンラインのテキスト検索で本を探す読者の数が増えるにつれて、本の著者は検索エンジンに引っ掛かり易い言葉を選ぶになる。」「個々のページや章がグーグルで検索されやすいようにされていく。」と。
21世紀の本は「ネット脳」に配慮した設計になるかもしれません。
| 本書の特徴
ネットに関する科学的調査がたくさん書かれていると思いきや、読書に焦点が当てられています。
数世紀前に本がどのようにして作られ、普及していったのか知ることができました。
| 目次
プロローグ?番犬と泥棒
第1章 HALとわたし
第2章 生命の水路
脱線?脳について考えるときに脳が考えることについて
第3章 精神の道具
第4章 深まるページ
脱線?リー・ド・フォレストと驚異のオーディション
第5章 最も一般的な性質を持つメディア
第6章 本そのもののイメージ
第7章 ジャグラーの脳
脱線?IQスコアの浮力について
第8章 グーグルという教会
第9章 サーチ、メモリー
脱線?この本を書くことについて
第10章 私に似た物
エピローグ?人間的要素
注 もっと知りたい人のための文献一覧
訳者あとがき
索引
| 関連書籍
ニコラス・G・カー,Nicholas Carr 翔泳社 2008-10-10
ニコラス・G・カー,清川 幸美 ランダムハウス講談社 2005-04-07
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